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認知症とは
認知症は病名ではなく、多くの原因があります。
脳神経内科・脳神経外科・老年内科・精神科できちんと診断してもらうことが大切です。
当院は平成20年10月より物忘れ外来を開設し認知症の早期発見・早期治療に取り組んでいます。お気軽にご相談ください。
認知症の原因疾患
変性型認知症
1)アルツハイマー型認知症(AD)
2)レビー小体型認知症(DLB)
3)前頭側頭葉変性症(FTLD)
4)進行性核上性麻痺(PSP)
5)大脳皮質基底核変性症(CBD)
非変性型認知症
1)脳血管性認知症(VaD)
2)慢性硬膜下血腫
3)閉塞性水頭症
4)脳腫瘍
5)正常圧水頭症
6)ウェルニッケ脳症
7)薬剤性せん妄
8)高齢者てんかん
9)仮性認知症(老年期うつ病)
10)甲状腺機能低下症(粘液水腫)
変性型認知症について
剖検ではADが47%、AD+VaDが4%、VaD18%、DLB18%、その他13%と報告されています(2002年赤津ら)。
①アルツハイマー型認知症(AD)
65歳以上にエピソード記憶障害(いつ、どこで、誰と、何をしたかという記憶の障害)、近時記憶障害(数分~数日の記憶障害)で発病します。
初期段階では、時間見当識が障害され、同じ事を何回も繰り返すようになり、今日は何月何日か?と繰り返し尋ねます。近時記憶障害からお金や通帳をしまった場所を忘れて、盗まれたと大騒ぎして探し回ることが繰り返されます(物盗られ妄想)。女性ではスーパーに買い物に行ったのに、何を買うのかを忘れてしまい、同じ物を買ってきてしまいます。約束を忘れてとトラブルが起きることがあります。仕事をしている場合は、膨大な情報を瞬間的に処理する必要からわずかな認知機能の低下でも仕事に支障が出るようになり、退職がちらつき、うつ状態から心療内科や精神科を受診することも多いです。
中期になると、場所に対する見当識障害から、自分の居る場所が分からなくなり、自分の家に居るのに他人の家に居ると思い込むようになります。徘徊(自宅を出ると一人で帰宅できずに歩き回る)が見られます。記憶障害も進み、数分前のことを忘れるようになります。そのため、食事をした後から飯はまだか?と催促をするようになります。家族の冠婚葬祭に出席したのにそのことを忘れてしまいます。
また物盗られ妄想以外の妄想も多くなり、被害妄想(近所の人が家に入り物を盗んで行く)、幻の同居人妄想(自分の家に他人が住んでいる)、嫉妬妄想(夫が浮気をしている)、替え玉妄想(目の前の妻は本当の妻ではなく、他人が入れ替わっていると思いこむ)が見られます。
若年性の場合、失語(言葉が出て来ない、理解できない)、失行(麻痺がないのに、行うべき行為を理解しているのに、随意的な行為ができない)、失認(物は見えるのに何であるの分からない)、計算障害、失読、失書が見られるため、残念ですが、これらの症状が出ると仕事ができなくなり退職を余儀なくされます。
末期になると記憶障害はさらに進行し、近時記憶だけでなく遠隔記憶も障害され、自分の名前、誕生日、出生地、家族の顔を思い出すことができなくなります。注意や思考を維持することができなくなり、健康な人なら考えなくてもできる着衣や入浴、食事、排泄などの日常的なことすらできなくなり、感情が鈍麻し、歩行困難から寝たきりとなり、自分では何もすることができず、終日の介護が必要な状態となります。
②レビー小体型認知症(DLB)
ADよりも若く発病し、遂行・注意・視空間認知の障害が見られます。近時記憶や見当識は初期では保持されますが、進行すると障害が明らかになります。
認知機能が変動し、生々しいリアルな幻視、レム睡眠行動異常、パーキンソン症状の合併が見られるのが特徴です。
ADと異なり脳MRIでは側頭葉内側部の萎縮は少なく、脳SPECTでは幻視を反映し後頭葉の血流低下を認めます。MIBG心筋シンチグラフィーで異常が認められます。
③前頭側頭葉変性症(FTLD)
ADよりも若く発病し、初期は記憶や見当識は保持されます。
脱抑制(我慢できない)、常同行動、食行動障害等の行動異常が特徴とされ、考え無精、社交性消失、無関心、性格変化が見られます。失語や意味性認知症で発病する方も見えます。
脳MRIでは前頭・側頭葉の萎縮が認められます。
診断と治療
認知症は生活情報、神経学的診察、高次脳機能検査(HDS-R、ADAS、CDR、CDT、DASC-8等)や脳画像診断(MRI・SPECT)より総合的に診断されます。
治療
変性型認知症は、根治治療は困難で対症治療となります。患者さん・介護者の方と共に認知症と長い目で付き合う覚悟が必要です。
当院では、患者さんの疾患情報と生活情報から生活のしづらさを軽減する観点より、薬剤調整、睡眠薬、抗不安薬、抗精神病薬、漢方薬、抗認知症薬の処方をさせていただいております。
介護保険サービスを利用していただくことによりご家族の介護負担の軽減と認知症の進行抑制を図ることも可能です。
非変性型認知症について
脳血管性認知症(VaD)
認知症全体の18%を占め、主に脳梗塞により脳組織が多発性または局所性に障害され発症します。障害された部位により多彩な症状をし、まだら認知症とも呼ばれます。物忘れ、見当識障害、実行機能障害、被害妄想、片麻痺、失語、血管性パーキンソン病、尿失禁等が見られます。不安、イライラ、意欲低下等の精神症状が前面に出ると、うつ病と誤診されることがあります。海馬萎縮はADに特異的とされていますが、病理学的には純粋なVaDでも中程度までの海馬萎縮を認めます。VaDとADに共通する病態として白質病変、微小出血、微小梗塞等の脳小血管病があります。以上よりVaDとADの鑑別はしばしば困難であり血管性認知障害が提唱されています。
治療としては、高血圧・糖尿病・脂質異常症のコントロール、抗血小板剤の内服、リハビリテーションにより脳梗塞の進行と再発予防、カテーテルアブレーションにより心房細動を洞調律に戻し心拍出量の低下を改善させる等を行います。